読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

白い球体になりたい

音楽好きだし、ゲイだし、世界が終わらないことも知ってる

日常

非日常を摂取しすぎてしまったために、何もかもが日常になってしまった。

いつものように同じ経路で出勤し、同じ昼食を摂り、同じ仕事をし、同じタイミングで会社を出、同じスーパー銭湯へ行き、同じマンガを読み、同じラーメンを食べ、たまにチャーハンを食べ、寝る生活。

休日をぶち壊すほどの何かもなく、ひたすらに自分一人だけどんどん老いていく感覚。

無気力な安定の中で、世界が滅びますよと書いてあるニュースを見ては思いを馳せ、死ぬのを待っていると、生きてるなぁって実感が湧いてきます。

会社にいると、外部からの情報は遮断され、さらに外部へ情報を発信することなど言語道断で、前時代的な会社の上の手続きに時間を搾取され、白鳥へ成長したと思ったらただのミドリムシだったかのよう、あるいは手で水を掬って遊んでいるかのようです。

元気一杯働く若手社員を見て、年配者たちはどうやらポルノ映像でも見ている時の表情にとても近いです。あぁ若いっていいなぁ、若いというだけでなんでもできそうな気がしてくるし、この子もすごいことをなんだかやってくれそうだなぁ、この会社でいっぱい成長して欲しいなぁという気持ちで、きっと毎日暖かく精一杯働く若者を見ているのでしょう。しかし、ポルノ映像は数時間でフィルムが終わってしまうように、この会社でのこの仕事も、きっと長くないことがわかっています。客観的な会社の立場、業績、実力、全てがこの会社のいく先を暗喩で表現しているでしょう。その事実に目を背け、若手社員に未来のない仕事を押し付け、成長し事業を支えていって欲しいなどと願うのは、宝くじまでにして欲しいものです。

時間はあっという間に搾取され、私はあっというまに30代が差し掛かり、ふと自分の持っている持ち物を見ると、実はゴミしかありませんでした。今後の人生をどう歩もうか、もう後戻りできないとされる30代を、沈没しているタイタニック号さながらの日本社会で生き延びていくには、とかんがえたところで思考停止しました。

明日も手で水を掬って遊ぼうと思います。

 

 

まくら

 「モノと目があう」という感覚。

 

不用品回収業者がやってきて、一人暮らしで溜め込んだ荷物を片っ端から片付けてもらった。

業者さんが部屋に最後まで残った要らないものを片っ端から片付けていく中、僕も要らないものをまとめる作業をしていた。やってきた業者さんはかっこいい人だったので、なんとなくチラチラ見てはいたのかもしれない。ふっと玄関先に目をやると、業者さんが雑に引っ張り上げて持ち上がっている元彼のまくらと、目があった。

 

人と距離を置きがちな私は、一人暮らしを始めるにあたってその悪癖をなるべく改善したいなと思っていた。家に絶対に人を上げなかったけど、それをやめて、積極的にうちでだらだら飲もうよと誘ったりとかしていた。付き合ってた人が—まるで化粧水を当たり前のように置いていく女みたいに—何かしらを置いていくのも、別にいいよと思っていた。別れちゃったら、捨てちゃえばいいんだし。

 

捨てなかったけれど。

 

今日まで、めんどくさいだのどうなので居座っていた、ありとあらゆるものを捨てた。

過去は消せなくても、薄まっていくかもしれないし、経験になる。ひょっとして、ようやく前を向けたのかもしれない。ひきづっていた記憶も、もうない。もう、ここに彼は帰ってこないし、ここには私も住まないのだ。私は行方をくらまし、もう彼も私まで辿り着く手がかりを失う。

はじめっから好きじゃなかったことになったのだ。

 

目があったまくらを、私は自然に無視することに成功した。

 

 

暮らした日々

良い出会い、消したい出会い

楽しかったパーティ

もう会えない元友達、また会いたい友達

作った曲、隣人のクレーム

引きこもった日々、3回目のシャワー

33分発の電車、いつものメンツ

セブンイレブンのレジのおばちゃん

不味い料理、誰かのために作ったケーキ

失敗した家具、完成しなかったレイアウト

ジムからの帰り道、雨に濡れても帰った道、壊れた傘、なくした鍵

もう会いたくない人たち

ペットボトル、プロテインの空容器、壊れたポット、壊したミキサー

下水の臭いがまじってる欠陥風呂、玄関のドアの薄さ、話し声が全て通る薄い壁

電車から一瞬見える部屋

深夜の名駅通り

タクシーの車窓

屋上の風景

 

さようなら

今では全てが愛おしい