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白い球体になりたい

音楽好きだし、ゲイだし、世界が終わらないことも知ってる

東京へ行くの巻

私が膝から崩れ落ちて泣いているのを、背後から眺めていた。

突然、私の周りを囲う東京の風景が動き出し、だんだん私は小さくなっていく。最初はビルや街が小さくなり、次は青い海や大陸が小さくなり、地球すらどんどん小さくなっていく。しまいには、真っ暗な宇宙の中を彩るように浮かんだ星も、ただの一本線になっていった。一本線は際限なく増えていく。待って、待ってと私が声を上げているのを嘲笑うかのように、そのスピードは加速していった。

私はどんどん悲しくなって、私の嗚咽も不快を感じるほど大きくなり、背景が完全に真っ白になった瞬間、泊まっていたカプセルホテルで目が覚めた。午前3時だった。

 

「東京は、人が流れている」
珍しく東京に住んでいたのに名古屋へ引っ越してきたバーの知り合いが、東京についてそう話してくれた。いつものように緑茶ハイに薄っぺらい言葉を溶かしながら、ぼうっとした頭でそう聞いたのをなんとなく覚えている。バーでの会話などいつもは一晩寝てしまったら全て忘れてしまうわけで、どうしてそんなことを尋ねたのかも覚えていない。しかしなぜか、彼は表情にどこか暗い影を浮かべながらそう話してくれたことを覚えている。

 

 「東京で生き延びるコツは何ですか?」

東京で生まれ、東京でゲイとして暮らす友人に今日は久々に会い、昼下がりのバーで思わずそう尋ねてしまった。東京で生き延びるなどとなんともマヌケな視点の抽象的な質問で、口から出た瞬間自分でも後悔を覚えるほど驚愕したが、友人はなんなりと、いつもどおりの丁寧な口調で話す。一呼吸おいた後、簡潔に全てを表現し、そして、東京に怯えている私に、魔法をかけるような言葉を言い放った。

 

「楽しむこと、じゃない?」

 

宇宙空間に投げ出され、宛てもなく流れていくちっぽけな私の涙が、ようやく止まった気がした。